民事訴訟においての公示送達とは、裁判の当事者に対する送達場所が不明である場合に、その事情を裁判所に申し立てて、本来の送達によらず裁判所の掲示板に掲示することをもってそれに変えることが出来る手続きです。
民事訴訟法第百十条
次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
一 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二 第百七条第一項の規定により送達をすることができない場合
三 外国においてすべき送達について、第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
四 第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
公示送達が可能なケース
もし公示送達をいつでも利用できる制度であると、原告は被告に知られずに判決を取得することが容易となってしまい、著しく権利保護に欠けます。
そのため、公示送達によることが出来るのは次のような場合に限られています。
- 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
- 付郵便送達が出来ない場合
- 外国送達ができない場合
- 外国送達を管轄官庁に嘱託したが6か月以上送付されなかった場合
上記の中でも、ケースとして特に多いのは1.と2.の理由によるものです。
当事者の住所、居所などが分からないことの疎明について
公示送達の申立は、その要件である住所、居所などが不明であることを疎明する必要があります。
まず第一に住民票上の住所を調査する必要があります。日本に居住しているのであれば、実際に住んでいるかどうかは別として、どこかに住所を持っているはずです。
試しに書留郵便を送ってみる
その住所に対して住んでいるかどうかを確認する方法としては、まず訴訟提起前に自ら郵便物を送ってみるという方法があります。
まずは書留郵便などで郵送を試みて、無事到着した様であれば、少なくとも同じ姓の居住者がいることが分かります。
もし到着しない場合は一定期間経過後に郵便物が返送されるはずですが、その理由により状況が変わって来ます。
◆あて所に尋ねあたりません
上記の理由での返却は、郵便局員がその住所に宛名の世帯がないと判断したものです。
表札に違う名前が書いてある、とか、表札がなく居住している様子もない場合などにはこのような表記で返送されます。
◆保管期間経過のため返還
あて所が確認できるものの不在である場合、ポストに不在票が投函され郵便局でしばらく保管されます。
その保管期間中に再配達の指定がなく窓口の受領もない場合、上記の理由で返還されます。
また証明方法として一般的なのは、公示送達の申立人において住民票上の住所などに実際に赴き、本人が住んでいないということを裏付ける調査(現地調査)を行ったうえで作成した調査報告書を提出する方法です。
この場合は、本人が居住している可能性が高まるため、公示送達ではなく付郵便送達を選択することが多くなると言えます。
現地調査を実施する
上記のように住民票上の住所に郵便が届かず、また居所や就業場所もわからないという場合は公示送達を進めるために、実際に現地へ赴き調査をすることになります。