送達とは、訴訟上で相手方に対し行う書類の伝達方法の一つで、普通郵便やファクシミリなどによる方法と区別して、重要な書類等の受け渡し方法として法定されています。
民事訴訟においては、訴状や判決書などを始めとして、送達によらなければならない書類が定められています。
送達は郵便業務従事者又は執行官が実施するとされており(民訴99ⅠⅡ)、実際は郵便局によるの特別送達が用いられています。
特別送達は原則として名宛人に対して直接郵便局員が手渡しで行う郵便方法で、差置送達や郵便局窓口で受け取る方法などの例外も定められています。
また「基本料金(普通郵便相当額)+一般書留料金+特別送達料金」 の費用がかかります。
送達によるべき訴訟書類
民事訴訟法では、以下の書類について送達によらなければならないと定めています。
【送達によるべき訴訟書類の例】
- 訴状
- 反訴状
- 訴えの変更申立書
- 各種参加申出書
- 訴訟告知書
- 訴えの取下書
- 控訴状、付帯控訴状、抗告上
- 上告状、上告理由書
- 判決書
- 支払督促
- その他
送達を受けるべき者
当事者に訴訟能力がない場合
この場合は法定代理人が送達を受けるべき者となります。
訴訟無能力者にあてた送達は基本的に無効です(大判明治44年3月13日)。
未成年の場合は両親が、成年被後見人の場合は後見人がそれぞれ法定代理人となります。
もっとも法定代理人が両親である場合は、どちらか片方に送達すれば良いと定められています(民訴102Ⅱ)。
当事者が刑事施設に収容されている場合
刑事施設の長が送達を受けるべき者となります(民訴102Ⅲ)。
当事者が法人である場合
代表者(株式会社であれば代表取締役、合同会社であれば代表社員)が送達を受けるべき者となります(民訴37・102Ⅰ)。
送達場所
住所など
まず送達場所の原則とされているのが送達を受けるべき者の住所、居所、営業所または事務所です。
個人の場合住民票上の住所に居住していればその住所、他に居住しているところがあれば居所ということになるでしょう。
法人である場合は代表者が送達を受けるべき者となりますが、代表者個人の住所ではなく、営業所または事務所(本店など、実際に業務を行っている場所)を送達場所とするのが一般的です。
就業場所
住所などが知れないとき、もしくは住所などへの送達に支障があるときには、就業場所が送達場所となる場合があります。
また送達を受けるべき本人が就業場所を指定した場合も同様です。
就業場所への送達をむやみに行うと、相手方の日常の業務へ影響を及ぼすこともあり、プライバシーの問題も含めて慎重に行う必要があります。
送達がなされなかった場合
実際に送達をすべき場所が判明していても、次の例のように送達が不能となる場合があります。
- 送達場所とした宛て所に居住していない
- 本人が郵便を受け取らない
- 居住しているがほとんど不在にしている
公示送達
もし送達場所にて住所や就業場所にて送達が出来なかった場合は、書記官の指示により、当事者はその住所などを調査することとなります。
この調査は、主に現地へ直接おもむき送達場所自体やその周辺の調査を行い裁判所へ報告します。
この時点で、住所や就業場所が不明であると判断される場合には、公示送達の申立を行うこととなります。